2019.06.19子育てポケットノート
子育てポケットノートVol.18~記憶力を鍛える、本当に必要な就学準備~
こんにちは。
Edu Support Office 川上淳子です。
今日の子育てポケットノートは、「記憶力を鍛える、本当に必要な就学準備」。
ちょっとポケットに入るサイズの情報。
* * * * *
長年の教職経験から、本当に必要な就学準備は「記憶力を鍛えること」と考えていました。このことに気付いている方は少ないのではと思います。
百マス計算で著名な隂山英男先生が著書の中で、「覚えること」の大切さを述べておられます。『入学準備隂山メソッド 小学校でつまずかないもじとかず 家庭ワーク』小学館 2004年小学館刊
・子どもが選んだ本で文字を覚えさせる(P22)
・買い物げゲームで3つのことを聞き取らせる(P74)
・7文字以上の文章を聞いて覚えられるようにする(P76)
・五人一首に挑戦してみる(P78)
すでに15年も前に、遊びながら「覚える経験」をさせていくことを提案しています。
しかし、残念ながら、実際には就学準備として「せめて自分の名前を書けるように」、あるいは全く反対に「書かせずに遊ばせてください」が定番ではないかと思います。どちらを信じていいのか、迷いますね。
私は18歳から家庭教師をしていました。学習への困難さを示すお子さんは「漢字が書けないこと」で学習への苦手意識があり、学習全般に影響を及ぼしていました。すぐにどれぐらい書けるのか書けないのかを調べ、復習させました。すべてのお子さんが漢字の獲得ができるようになると他教科の成績が向上していきました。「漢字は大事」と思っていました。
その思いは小学校の教員になってからも変わらないことでした。
教室で指導を重ねるうちに「左右がわからないこと」も文字の獲得に影響していることに気付きました。子どもたちに頭を机に伏させ、右手を上げさせると3割ぐらいが間違えていました。
黒板に書かれた文字が「左から右へ」、「右から左へ」と何度練習しても、本人が左右がわかっていないと理解や定着は程遠いのです。
また、書いたことを覚えることが苦手なお子さんが多くいました。
子育ての中で一番多く遊んだ遊びが「神経衰弱」。
最初は6枚から、だんだんトランプを増やしていき、52枚すべてで遊べるようになりました。2歳半離れた兄と妹とでは自ずと勝負がつき、長女が泣いたり騒いだり、トランプをぶちまけたりのトラブルはたびたび起きました。
「ハートの7が出た。さっきダイヤの7があの場所にあったから」と短期の記憶が鍛えられます。左右、上下、この他に右斜め、左斜め、右斜め下、左斜め下とそれぞれのトランプの位置関係を名前を付けて理解していきます。
どのカードがどこにあって、引いたカードから見るとどの位置にあるかかがわかるためには記憶することが必要です。わが子が学習面での苦労が少なかったのは、ひとえにこの遊びのおかげだと母は思っています。
教室の子どもたちにも挑戦させました。
9年間勤めた最後の勤務校には金曜の始業前に「学年・学級の時間」があり、隔週で校庭と教室で遊ぶというルールでした。
そこで、教室での活動にはこの神経衰弱を行いました。覚える経験がなかった子どもたちも徐々に覚えられるようになりました。
最後に担任した4年生では日々の授業や漢字練習の成果もあり、漢字50問テストの平均点が76点から89点まで向上していきました。中には30点以上も成績を伸ばしたお子さんは親子でその変化に驚き、とても感謝されました。
詳細は拙著をご高覧いただけますと幸いです。『教師のためのケース別アンガーマネジメント』P54 学級経営におけるアンガーマネジメントの効果~学習面でも大きな効果を発揮~漢字50問テスト平均点の推移~ 2017年 小学館刊
「丸暗記はよくない」と言われます。
しかし、ことがらを覚えないことには、さらに深い考えに辿り着けません。
小学生とはいえ、4年生ぐらいになると学習内容のワードはすべて漢字です。国語だけでなく、理科も社会も抽象的なことがらは漢字で書き表されています。識字率が高いか低いかによって、その後の進路まで変わってきます。算数でも文章の読み取りの力が関わっています。
「10歳の壁」と言われるゆえんは、まさにこの抽象的な思考ができるか否かが鍵になっています。「10歳の壁」を越えていくには漢字が役に立ちます。学習と識字率は切っても切れない関係があるのです。
「神経衰弱」は遊びながら記憶力を鍛えます。お子さんが育つには親御さんの手助けが必要です。外注せずに、お金をかけずに、記憶力を鍛えることができます。
本当に必要な就学準備は就学のずっと前から始まっていることなのです。
ちょっとポケットに入るサイズの情報、
「子育てポケットノート」。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会
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