2020.12.10子育てポケットノート
子育てポケットノートVol.188~言葉を育てる道のりは長い~
目次
- ○ はじめに
- ○ 1.問題の実例~小4理科を例に~
- ○ 2.何が問題なのか~学習の基本は言葉~
- ○ 3.言葉育ての道のりは長い~3つのポイント~
- ・➀声の高さ、ペースに合わせる
- ・➁目を合わせる
- ・➂言葉を繰り返す
- ○ まとめ
はじめに
2020年12月8日、国際教育到達度評価学会は2019年に実施した「国際数学・理科教育動向調査(TIMISS)の調査結果」を公表しました。対象は小学校4年生、中学校2年生、4年に一度調査が行われています。
日本の子供たちの「今」を読み取ることができます。
日本の子供たちは小中ともに国際的に見ても引き続き高い水準を維持していること、前回2015年に比べ、小学校理科では平均点が優位に低下している一方、中学校数学では平均得点が優位に上昇していることが分かったそうです。
小学校での理科が問題となっています。
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1.問題の実例~小4理科を例に~
この結果を報じた新聞記事には小4理科の問題例が1つ挙げられていました。
下の絵はさばくを表しています。
(雲、太陽、山、サボテン、ラクダ、トカゲ、蜘蛛、小さな虫が2匹、石がモノクロで描かれています。)
問 題)絵に描かれている生き物を2つ答えてください。
回答例)サボテン、ラクダ
問 題)絵の中で生き物ではないものを2つ答えてください。
回答例)太陽、石
この問題の正答率は、以下のとおり。
1位 シンガポール 84%
2位 アルメニア 79%
3位 カザフスタン 71%
国際平均 45%
38位 日本 37%
国際平均を下回り、シンガポールの半分以下の正答率!
この公表のわずか2日前、JAXAがリュウグウからサンプルリターンの偉業を成し遂げていました。
大げさな言い方になりますが、理科教育が低迷する中、世界初の技術を繰り出している日本の「今」に驚かされます。
2.何が問題なのか~学習の基本は言葉~
では、なぜ難しかったのでしょうか。
朝日新聞2020.12.9に筑波大学付属小学校の佐々木昭広副校長(理科教育)が、
「日常生活の言葉の力が落ちていることがうかがえる」
「生き物に虫も草も木も入ることが理解できていない。国語など他教科と連携する理科授業がますます重要になる」
とコメントしており、その内容に賛成です。
加えて、問題文を自分で読み、絵の一つ一つに○などの印をつけて確認していくという問題の解き方を学んでいたかも気になるところです。
こうした調査結果を見るにつけ、改めて言葉を介して学習が行われていることがわかります。理科も実は文章の読解力が不可欠なのです。
3.言葉育ての道のりは長い~3つのポイント~
人間と他の動物の違いは、
火を使うこと、道具を使うこと、言葉を話すことの3つ。
とりわけ、言葉の獲得は複雑。
ですから、子育ては言葉を育てることと言っても過言ではありません。そして、その道のりはとても長いのです。
将来、理科の勉強で困らないようになんて考えて育てるわけではありませんが、日々の一つ一つやり取りの中で子供たちを賢く育てていくことができます。
そのためのとっておきの3つのこと。
➀声の高さ、ペースに合わせる
誕生前、お腹にいるときにも子供たちは外界の音は言葉を聞き取っていると言われています。
そして、誕生後、よく観察していると、言葉にならない言葉を話しています。「喃語」と呼ばれています。
あ~、あ~
う~、う~
それらを聞き取って同じぐらいのスピードで繰り返していきます。月齢が上がっていくと、ロングトーンになり、あ~~あ~~あ~~と結構長く声を出すようになります。
電車やスーパーでお子さんが喃語を言っているのに全く反応していないご両親をお見かけするたび、
「もったいな~~い、今、大事な時なんですよ。お子さんの声に合わせてみてくださいね。」
と言いたくなるのをぐっとこらえています。(こうした関わりは家族でないとできないものですから。)
お子さんの声の高さやペースに合わせて応えてあげてくださいね。ただお子さんのまねっこをすれば大丈夫です。
➁目を合わせる
お子さんの目を見て声をかけてあげていますか。
話をするとき、視線を合わせるのは当たり前のことのようですが、意外とできないもの。
信頼、自己肯定感などを育てることにも繋がります。
非言語とは表情、しぐさ、声の抑揚などの言語ではない情報のこと。状況が矛盾しているとき、理解しにくいときは言語7%、聴覚35%、視覚55%の割合で情報を得ているそうです。
言葉よりも、耳で聞くことよりも、目で見てとらえることで私たちは多くのことを理解しているのです。
言葉を獲得する途上にある子供たちにとって、目の前にいる親御さんの一挙手一投足から多くのことを学んでいます。
就学前の6年間、言葉の基礎となる力はほぼ出来上がっています。学習にとってもとても大事な時期なのです。
親御さんの果たす役割はとても大きいのです。
➂言葉を繰り返す
長く人生を生きていると、何が正解とか、こうすると間違ってしまうとか、予めわかってきます。
だからと言って、それがすべて正解とは限りません。
親の言うことを聞く子がいい子であったとしたら、人類の知恵も文明も科学も進歩していきません。
大人が違和感を抱く「もの」、「こと」が新しい時代を創っていきます。
親が正解を言い、親に従わせようとすることで子供たちの創造性をもぐことになります。
言葉を話せるようになったらどんなに拙い内容でも、
「そうだね、~~なんだね。」
としっかりと言葉を受け止め、肯定してみましょう。これも難しくはありません。お子さんの言葉を繰り返してあげればいいのです。そこから次の一歩が始まります。
説教する、説得する、ダメ出しをする、無関心な言動、
NGです。
まとめ
子供たちの言葉の成長は一様ではありません。
私事ですが、なかなかしゃべらない長男は聞いて育つ時期が長く、小学校2年生ぐらいまで周りからの評価が低かったです。大学院に進学し、現在では国内のみならず国際学会での発表もやり遂げています。もちろん英語。。
話して育った長女はおしゃべりがかわいい子でしたが、思春期に入るとぱったりしゃべらなくなり、人と関わらないと言い出しました。中学生から音楽や絵画、歴史に目覚め、学部と修士課程を経て学芸員へ。現在は専門の歴史ではなく、音楽を主にした文化事業に携わっています。
二人とも二転三転の展開がありました。将来、どうなるかは本人にも親にもわからないものです。子供は親の心配をよそに、親の想定を超える道を歩んでいくものです。
皆さまのお子さんのタイプはどのようなタイプでしょうか。
ペースを合わせる
目を合わせる
言葉を繰り返す
このような方法で温かな手袋で包んであげるようにお子さんとの日々をどうぞ大切になさってください。言葉の基礎が育っていると、きっと理科も算数も国語も得意になるはずです。
そのためにもう一つ。
図鑑をリビングに置いておく、星を見上げる、天文台や博物館の見学、最新の科学情報にふれる、結構たくさんの働きかけがあるものです。
お子さんの年齢や興味に応じて、一つ一つ試してみてください。働きかけがあってこそ育っていきます。
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