2020.05.15子育てポケットノート
子育てポケットノートVol.149~おやつは算数の時間~
目次
- ○ 子どもたちは何に困っているのか
- ○ 学力と非行
- ○ おやつは算数の時間
- ○ まとめ
子どもたちは何に困っているのか
小学校の算数が苦手だったという方は多いのではないでしょうか。かく言う筆者も大の苦手でした。
かれこれ20年以上前、一年生にこんな問題を出したことがありました。
「1だいのベンチがあります。2人すわっていました。あとから3にんきました。ベンチにはなんにんがすわっていますか。」
しき 1+2+3=6 こたえ 6にん
ベンチは聞かれている人数には関係がありません。しかし、問題文に書かれているので「えい、やっ!」とばかりに式に加えているのです。
その解答を見ながら、問題で示されている内容を読み取るには経験が必要ではないかと考えていました。
他にも、小学校二年生の「時計」。
アナログの時計の読み方だけでなく、「10分後は何時何分か」、「〇時〇分の10分前の時刻は?」といった問題にお手上げの子どもたちが多い単元です。
家庭で生活している様子が如実にわかります。
「早くしなさい。」と怒鳴られている子。
「7時20分までに支度してね。」と言われている子。
デジタル式の時計で過ごし、アナログの時計を知らない子もいます。
そもそも時間など関係なく親にも干渉もされず流れるように過ごしている子もいます。
実体験が乏しいお子さんはどうしても理解できるまで時間がかかります。理解できたかどうかに関わらず、配当された時間が終わるとテスト、生活の質が反映した結果になります。
もう一つ、小学校2年で始まるかけ算、それと対をなす小学校3年生のわり算も難しい内容です。
これも文章に出てきた数字をかけたりわったりしているだけでは解けないのです。
じかよう車が2台あります。タイヤは全部でなんこありますか。
式A 2×4=8 答え 8こ
式B 4×2=8 答え 8こ
答えは8こで同じですが、自家用車1台あたりにタイヤが4こ付いているので、
1あたり量×いくつ分=全部の量
のため、式Bが正しいのです。
この「1あたり量」を日常生活でたびたび経験し、言葉でもやりとりしていることが大事です。
学力と非行
この書籍が出版されたとき、学習の困難さを解決する手立てとして、家庭での実体験が必要だということが広く社会に認知されることに感動すら覚えました。
学校だけががんばることには限界があります。ご家庭の協力を得なければ子どもたちの差はどんどん広がっていきます。
ーAmazon 本書「内容紹介」より引用ー
児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。
「ケーキの切れない少年」はケーキを等分に切ったことがない少年。。そうした経験の欠如が後々非行へと走るという現実は大げさな表現ではありません。教育現場にいるときに実感していたことでした。
ご家庭でのちょっとした働きかけがあるかどうかで、その後の行動にも影響が及ぶことを知っていただき、保護者の皆さまには子育てに真摯に向き合っていただきたいのです。
ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)宮口幸治 2019年7月
おやつは算数の時間
小学校一年生、二年生というと、簡単な学習をしているイメージをお持ちかと思います。
しかし、生活にかかわる学習が多いため、入学前の経験が大きく左右します。計算にかかわる事柄だけでなく、時間、長さ、量など多岐に及びます。
「おやつは算数の時間」と言っても過言ではありません。
おやつのときの様子はそのまま問題になっているといってもよいのです。
キャラメルを1人に2こずつ渡す、兄弟3人では6こ。
10このキャラメルを3人兄弟で分けると、1人に3こずつ分けられて、1こ余る。
1000mlのジュースを10人で分けると1人分は100ml。
ホールケーキやピザを家族6人で分ける。
食べるときに正確さは最重要です。ケーキやピザを分けるとき、子どもたちは息を殺してナイフの動きを見つめています。
小学校の算数は生活経験で理解できる内容から始まり、一気に難しくなっていきます。四年生になると▢と〇を用いた一次関数。さらに、高学年になると、x、yでの記号を用いて解いていきます。
親世代に比べると、相当難しい内容を学んでいます。
ですから、できるだけ低学年のうちに学習することに慣れている、抵抗が少ないことが望まれます。
算数ができないことが将来、どうこうなると決めつけているのではありません。ただ、実体験が少ない子どもたちにとって、教室で学ぶ一つ一つのことを難解に感じてしまうのです。
さらに、学年が進めば進むほど、復習に時間を取ることは少なくなり、理解の差はさらに広がっていきます。
まとめ
臨時休校が終わるまであと3週間もあります。
学校再開から順調に授業が進んでいくとよいのですが、第二波の感染が発生すると、さらなる外出自粛や休校要請が起きるやも知れません。
米国ニューヨーク州だけでも新型コロナ感染後、川崎病に似た症状を呈している子どもたちの事例が100件以上報告されています。(NY州クオモ知事 2020.5.12談話)日本での事例はないものの、新型コロナがもたらす事態は予想できません。また、近年猛威を振るう台風による水害も予想されます。
今後、学習が中断する局面になっても、焦ったり戸惑ったりしないようお子さんに働きかけることを続けてください。
「こんなことができそうだ。」
「これに挑戦してみよう。」
「ここを心がけてみよう。」
「ここにも算数の内容が隠れている。」
と気づかれたことがありましたら、ぜひ取り組んでみてください。
そして、何年生であっても気づいたそのときから始めてください。
子どもたちは賢くなりたい、親に褒めてもらいたい、いつもそう願っているのです。その温かなやり取りが学ぶ意欲に繋がっていきます。
合い言葉は「おやつは算数の時間」。
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