2019.04.26じゅんぶろ・ほのぼのとーく
東京大学入学式祝辞からの問いかけ∼これからの教員がもつべき「意志」~
目次
東京大学入学式祝辞に心揺さぶられ
2019年4月12日、上野千鶴子東京大学名誉教授による東京大学入学式祝辞。
ネットでのやりとりが喧しくなっています。過去の上野氏の言動への批判、そして、共感へと振れ幅が大きく、受け取り方がさまざまです。
このことが今後、日本の教育のターニングポイントになってほしいと願いながら、祝辞からの問いかけを考え続けていました。
何度読み返しても心が揺さぶられます。
「世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、『しょせんおまえなんか』『どうせわたしなんて』とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。」
「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分たちが勝ち抜くためにだけに使わないでください。恵まれた環境と能力を、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。」
「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。」
東京大学 > 入学案内 > 総長室から > 総長談論 > 式辞・告辞集 > 平成31年度東京大学学部入学式 祝辞より
*写真は2016年度長男の東京大学大学院入学式。
教師はがんばろうにもがんばれない子のために
4月22日、大学の講座冒頭でこのお話を伝えました。
教員養成大学の学生に、いの一番に知ってほしいことでした。
教室には勉強のできる子どももいれば、あまり得意ではない子どももいます。勉強ができる子どもはどの先生になっても成績のよさを維持していくことができます。
けれども、できない子どもにこそ指導力のある先生が必要です。
「この先生になって勉強が好きになった」、「漢字が書けるようになった」、「学校が楽しくなった」と言ってもらえる指導力のある先生になってほしいと思います。
がんばろうにもがんばれないひと
がんばるすべを知らずに、自暴自棄になったり、不登校になったり、攻撃的な言動を繰り返したりする子どもたち。
新聞やテレビに連日報道される出来事を見るたびに、子どもたちの意欲に火を灯せる、そんな先生が一人でも二人でも増えてほしいと切に願っています。
成功体験の作り方
では、がんばる子どもにしていくためにはどうしたらよいのでしょうか。
方法はいくつもあります。今日はアンガーマネジメントのテクニック「サクセスログ」をご紹介しましょう。
「サクセス」というと、皆さんはどのようなことをイメージされますか。
小学校では。。。
テストで100点を取る。徒競走で1位になる。文字を上手に書く。友達とけんかをしないで仲良く遊ぶ、縄跳びの二重とびができる、跳び箱7段跳べる、バスケットボール試合でゴールを決める、数限りなくあります。誰かと比較して首位に立つ、完璧な状態に仕上げるなど、完成した状態をさしていますね。
ところが、ここで言う「サクセス」はちょっと違います。
小さいこと、些細なことでもよいのです。その日できたこと、上手くいったことを「成功」と呼んでいます。
それを記録することで、「毎日、こんなに多くのことができている」と自信がもてるようになります。
例えば、学校に行けた、雨の中を登校した、自分から挨拶ができた、苦手な友達の顔を見ることができたなど、他の人にとっては取るに足らないような出来事でも、自分にとって成功と感じていれば書き残していきます。
その一つ一つの経験が成功体験に他なりません。自己肯定感のある子どもたちに育っていくことでしょう。
これからの教員がもつべき「意志」とは
子どもたちができている小さなこと、些細なことを先生が見つけ、育てていくことで、
「がんばれない子をがんばれる子へ」と変容させられます。
大きな花丸をノートにつける、拍手をする、握手をする、頭をなでる、笑顔を見せる、「がんばったね」と視線を送るなど、先生は書ききれないほど、子どもたちが成功していると教えられるのです。
他の子どもと比べるのではなく、子どもの行動の一つ一つがほめる材料になり、それが子どもの意欲を育てていきます。家庭が経済的に厳しい状況にあっても、教育の力が未来を変えていくことができます。
家庭でなしえないときにこそ教師が最後の砦となって、子どもたちの未来を拓いていくことができるのです。
これからの教員がもつべき「意志」。
この意志をもてるよう教員を養成していきたいと、上野氏の祝辞から強く心に誓いました。
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会
アンガーマネジメントコンサルタント™
国立大学法人宮城教育大学教育学部非常勤講師
Edu Support Office 代表 川上淳子
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